ペットもペットを飼う人も幸せにしたい!
ブルドックの繁殖からトリミングサロンまで手掛ける獣医師の挑戦
合同会社Vets Consulting 代表社員・獣医師 小吹貴之氏

動物関連事業を手掛ける合同会社Vets Consulting(埼玉県熊谷市)代表社員・獣医師の小吹 貴之(おぶき・たかゆき)氏に取材を実施。ブルドックの繁殖事業や繁殖引退犬の里親探し事業など、産科診療だけでなく動物取り扱い事業を幅広く手掛ける理由や創業の経緯、社長が考える「ハレノヒ」についてお話を伺いました。
(聞き手:ハレノヒハレ 大塚辰徳編集:ライフメディア 岸のぞみ)

産科診療だけでなく、繁殖・里親探し事業にも注力

まずは御社の事業内容について改めて簡単にお聞かせください。

小吹 貴之氏(以下、小吹氏):いわゆるブリーダーさん向けの犬や猫の産科診療を主に手掛けています。そのほか、繫殖引退犬の里親探しをする「里親テラス」、ブルドッグの繁殖を行う「ブルドック犬舎」、犬猫の美容や健康のためのトリミングサロン、飼い主さんに知っておいてほしいことや救急搬送されるような事故を未然に防ぐための方法などをお話しするYouTubeチャンネルの運営なども行っています。

また、今の会社とは直接の関係はありませんが、立ち上げから携わっている熊谷夜間救急動物病院の院長も業務委託で請け負っています。

 夜間救急病院の立ち上げから院長を務めてきた獣医師としての技術力と24時間診療できる対応力、確実な繁殖サポート技術、ブリーダーさんとの強固なつながり、あとは里親事業を手掛けている事業者としては中堅規模といえる全30頭を収容できる飼育スペースを有していることなどが弊社の強みです。

 犬舎や里親テラスの事業でいえば、獣医師が全体の運営責任者である点も大きいと考えています。犬猫の体調管理も徹底できますし、避妊をはじめとした適切な処置もできる。知識のある獣医師だからこそやるべきであり、強みを発揮できる事業だと思っています。

飼い犬の手術失敗を機に獣医師の道へ

そもそも獣医師を目指そうと思ったきっかけはどこにあったのでしょうか。

小吹氏:実家で大型犬の雑種を飼っていて、中学生の頃にさらにもう1匹新たな犬を飼うことになりました。どこかの家庭で飼育できなくなったゴールデンレトリーバーを引き取ったのですが、元々飼っていた犬と新しく引き取った犬がじゃれあいをする中で片方の犬が足を骨折してしまったのです。

動物病院に連れて行ったところ、何と治療失敗。大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)骨折で大腿骨頭(だいたいこっとう)切除術というオペが必要なものでしたが、患部が股関節の近くで固定しづらく難しい手術だったために失敗したようでした。担当医師は誠実に失敗理由を説明し、2度目のオペで無事に成功したのですが、手術の失敗を目の当たりにしたことで大きな衝撃を受けました。獣医師を目指そうと考え始めたのはこの頃のことです。とはいえ、実際に本腰を入れて勉強を始めたのは高校卒業してからでした。

創業までの経緯についてもお聞かせいただけますか。

小吹氏:岩手大学農学部獣医学科を2012年に卒業した後、埼玉県深谷市の一般病院に4年間勤務。その後、横浜市内の夜間救急病院で3年ほど勤務しました。埼玉県熊谷市は深谷市に隣接しており、熊谷市付近に動物の夜間救急病院がないことを知っていた私は、横浜の夜間病院で働いていた仲間4人とともに、熊谷夜間救急動物病院を立ち上げました。

仕事が夜間救急だったので昼間は時間が空いていましたし、熊谷には土地もあります。救急病院の立ち上げが落ち着いた後、何かほかにもできないかと考えて始めたのがブルドックの繁殖事業です。もともと横浜に住んでいた頃からブルドックを飼っていたんですが、ブルドックは自然交配では繁殖できないんですよ。ブルドックの繁殖を進めているうちにブリーダーさんと仲良くなり、次第に「産科診療を始めてほしい」というニーズをいただくようになったため、事業を拡大。2020年1月に個人事業主としてスタートし、事業拡大に伴って法人化していきました。

事業拡大の過程で里親テラスも始められています。その理由についてもお聞かせください。

小吹氏:ブルドック犬舎の事業は共同経営者の妻がメインで運営していますが、ブルドック犬舎の業を進めていく中で繫殖引退犬やハンディキャップを背負っている犬についても課題意識を感じるようになり、里親募集なども手掛けるようになりました。

犬種でいちばん好きなのはチワワなんですが、里親テラスには常時チワワだけで4~5匹程度いるんですよ。かわいくて、何度自分の子にしたいと思ったことか(笑)。またかわいいやつが来た! と毎回言っていますね。

 最近ちょっとぽっちゃりしたチワワと一緒にダイエット企画をYouTubeで始めたんですが、企画を始めてからぜんぜんお酒を飲まなくなりましたし、チワワも着実に痩せてきています。僕はアメリカンフットボールをやっていたので体脂肪率はもともと10%弱でしたが、いつのまにか30%に届きそうになっていて驚きました。今はダイエット企画のおかげもあって20%前後。体脂肪率10%を目指してチワワとがんばっています。

幸せなペットと飼い主の数を増やしたい!里親募集のFC展開を目指す

今に至るまでに経営の面で苦労された時期はありましたか。

小吹氏:好きが高じて仕事を増やしすぎたかなと思う瞬間があります。毎日1~2件は夜間の帝王切開などが入ってくるので慢性的に寝不足気味なことが課題ですが、仕事自体は好きなので、苦労していると感じたことはないかもしれません。

お金の面ではものづくり補助金の申請がうまくいかなかったときは大変でした。実は一般の方がブリーダーさんから直接子犬を買おうとするとブリーダーさん側の負担が大きいので、子犬を飼いたい人とブリーダーさんの間に当社が入ってオンラインでマッチングできるようなサイトを構築しようと考えていました。補助金の申請はそのための資金として活用する予定だったのですが、結局いろいろあって採択されず。そのための資金分は赤字計上となってしまったのは悔しかったですね。とはいえ、サイトは完成させたので早く活用していけたらと思っています。

そんな小吹社長にとって、これまでで一番の「ハレの日」はどのような日でしたか?

小吹氏:大学受験に合格した日でしょうか。1年浪人していたこともありますし、何よりその後の獣医師としての第一歩を踏み出せた日として一番のハレの日だったんじゃないかと思いますね。

今日(取材日)の空はさわやかな秋晴れです。今日の空を人生に例えるとどのようなものになりますか?

小吹氏:涼しくなってきたので気候もよく、ほどよく雲も出ている気持ちのいい気候なので、大好きなチワワとお散歩に行くのにちょうどいい天気。朝の20分のお散歩が楽しくなる季節なので、そんなほがらかな日常を思わせる空模様ですね。

そんな未来の晴れを実現するために最も大切にしていること、そして今後の展望についてお聞かせください。

小吹氏:繁殖引退犬を介護施設などに連れて行って高齢者の皆さんの癒やしになればと思い、先日鴻巣の介護施設で試験的に運用しました。需要はあると思うので今後もこのような活動は広げていけたらと思いますね。

 また、里親テラスを全国規模にしていけたらと思っており、そのためのフランチャイズ展開も検討しています。そうすることで人と動物の双方の幸せが増えて、助かる命が増えていくんじゃないかと思っています。

ありがとうございました!

取材を終えて 撮影小話

大塚:なかなか聞けないお話も多くてとても勉強になりました! 小吹先生は本当にペットに対する愛が深くて、ペットの飼育を放棄する飼い主を減らすにはどうしたらいいのか、高齢者で足を悪くしてペットを飼えなくなってしまう人には何ができるのか、いつもそんな話をされているんですよ。アイデアマンなのでお話していてとても面白いです。

小吹氏:大塚さんとは僕がまだ深谷にいたときからの付き合いになるのでもう10年ぐらいになりますかね。大塚さんは飲んでもまったく乱れない人(笑)。しっかりした大人の鑑だなと思います。営業マンとしてはまさに完璧。あと僕にやさしいので助かっています(笑)。

大塚:先生は籠原で居酒屋さんも経営されているので本当にお忙しそうですが、これからもいろいろとお話しながら伴走していけたらうれしく思います。引き続きよろしくお願いいたします!